アメリカと日本の契約法を比べて見よう

日ごろアメリカの契約書を翻訳しながら、「どうしてアメリカの契約書はページ数が多いんだろう」、「あの翻訳者泣かせの、同じような意味の単語を三つ並べる習慣はどうして生まれたのだろう」、など、アメリカの契約書の分量の多さや内容の詳細さに疑問を持った人も多いかと思います。もちろん、日本の契約書のなかにも複雑で分量が多い契約書もありますから、一概には言えないとしても、傾向として両者に違いがあることは多くの人が感じているところかと思います。アメリカと日本とでは、契約を規律する法律(契約法)もそれを実現する裁判所の制度も違いますし、それらの根底にある社会や文化の発展の過程も違うでしょうから、契約書のスタイルに違いが現れても不思議ではありません。

このセッションでは、皆さんが普段は翻訳作業の対象としてご覧になっているアメリカの契約書や日本の契約書が、実際の契約締結交渉、取引の実行、裁判による契約上の権利の実現の中でどのような意義を持っているのかを、アメリカと日本の契約法の視点から比べて見たいと思います。契約の成立、契約条項の解釈、契約の履行/ 不履行、救済(契約上の権利の実現)の各ステージで、アメリカ法と日本法とで明らかな違いのある法律上の原則やルールをいくつか指摘することができます。他方で、共通又は似通っている面も意外に多いと感じられることでしょう。

発表者と参加者の皆さんとのディスカッションの中で、参加者の皆さんの今後の翻訳業に何か一つでも有益な発見があれば良いなと願いつつ、会場でお会いできることを楽しみにしています。