SBSとその字幕 ~ 多文化テレビ局での字幕翻訳

SBS(Special Broadcasting Service)は、オーストラリアが多文化主義へと変換していくなか1980年に開局された放送局です。SBS憲章には、多言語・多文化の番組を発信して多様な文化情報を国民に伝え、啓発し、楽しんでもらうこと、オーストラリア社会の多文化性を反映させることが謳われています。外国語番組を吹き替えではなく字幕で放送しているのも、この理念の現われです。

SBSの字幕は局内で制作しています。SBSは開局以来、字幕分野の草分けとして、さまざまなスタンダードを作ってきました。字幕の色やリーディング・スピードから、原語のネーティブ・スピーカーが翻訳し、英語のネーティブ・スピーカーが編集するという方式まで。使用するテクノロジーは大きく変わってきており、今後の模索も続けています。

字幕翻訳はどんな点が一般的な翻訳と違うでしょうか?明らかな制約としては、リーディング・スピードが挙げられます。言葉が発せられている間しか画面に出ない字幕に情報を全部盛り込めるかが大きなチャレンジです。注をつけられないので、情報の凝縮が必要になります。また、字幕は単独で読まれるのではなく、画面に載るものなので、目に見える絵と聞こえる音との兼ね合いも考慮に入れなければなりません。ほかには…

映像を交えながら、SBSとその字幕についてお話ししつつ、皆さんからもヒントをいただければと願っています。