翻訳者の脳科学

ニューラル機械翻訳はプロ翻訳者の脅威となるのか、ならないのか。「翻訳」とは一体何なのか。ポストエディットは普通に翻訳するのとどう違うのか。本発表では、これらの議論に、科学的根拠に基づく一定の回答を示します。具体的には、脳科学的アプローチによる実験結果を提示します。脳機能イメージング装置(fNIRS)を使った翻訳プロセスの検証結果にもとづき、プロ翻訳者とアマチュア翻訳者の違い、ポストエディットとそうでない通常の翻訳作業との違いを、翻訳者の脳内の活性化機能の違い(すなわち、頭の中のどの部位を動かしているのかという違い)から説明します。これにより、私たちが言うところの「翻訳」とは、字面の解釈だけではなく、言葉の裏にある意図を理解することが大事であるといった経験的にいわれてきた事を、実際の脳内活性部位の相違から同定できるのです。つまり、「翻訳」のできる人と、「そうでない人」の脳の動きの違いを区別できるというわけです。

対象者:翻訳者・通訳者、翻訳関係者全般