英日翻訳ワークショップ:コミュニケーションのための翻訳

翻訳文の「ながれ」について考える

実用文を読むとき、私たちは必ずしも一語一文、目で追いながらじっくり読むわけではありません。たとえばある文が接続詞の「しかし」で始まるとすると、前に書いてあったことから内容を予測して、あとの部分を読み飛ばしたりします。また、文章には「リズム」というか「ながれ」があり、それに乗ってスイスイと読んで、情報を得ていきます。

今回のワークショップでは、「英語の実用文をさっと一度読んで意味が伝わる和文に仕立て上げるには?」という大きなテーマについて、「ながれ」という切り口から皆様とともに考えたいと思います。まず、英文と和文の構造や構成の違いについておさらいした後、文と文の「つながり」に関係する接続詞、句読点(日本語ではあまり使われないコロンやダッシュなど)、これまであまり取り上げられることがなかった(らしい)文末表現などの観点から検討する予定です。

検討対象のひとつとして、第8回JAT翻訳コンテストの英日部門課題文の第2パラグラフ(“Direct lending... more visible.”)を取り上げ、応募者による翻訳を比較してみます。あらかじめ、原文とファイナリストの訳文、審査員の講評をお読みいただくと、より突っ込んだ議論ができると思います。