IJET-34 (5–6 September 2026)
Session
作家・作品との語らい:オーストラリア児童文学の翻訳
著名な比較文学者でポストコロニアル批評も論じるガヤトリ・C・スピヴァクは、かつて「translation is the most intimate act of reading」と述べた。このプレゼンテーションでは、スピヴァクの言葉を念頭に、作家を交えた翻訳ワークショップにおけるテキストとの語らいについて発表する。題材は、オーストラリアの先住民作家 Cheryl Leavy の絵本 Yanga Mother (2024)、移民作家Angie Cui の絵本The Festival of Ice and Snow (2026)で、2つのワークショップは発表者とその同僚のLucy Fraserがクイーンズランド大学で2024年、2025年に共同開催したものだ。 Yanga Motherは英語とKooma語の2カ国語出版で、作者Leavyの祖母にあたる人の子どものころの体験に基づく。祖母は、1930年代に家族から強制的に引き離されたいわゆる「盗まれた世代」に属し、生き別れた母親を思う心がLeavyに引き継がれる。The Festival of Ice and Snowで語られるのは、中国出身の作者Cuiが子どものころに家族で訪れたハルビンの雪まつりの思い出だ。どちらの作品にも、異なる言語と文化の背景が入り混じる。原文がすでに「翻訳」を含むともいえる。このような重層的なテキストを、私たちは翻訳者としてどのように日本語で伝えるのか。翻訳をめぐるさまざまな課題、そして作家と翻訳者の協働について、絵本ならではの翻訳の難しさとともに、参加者の方々と考えていきたい。